タミル語映画『ピザ!』感想メモ

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アマプラを物色していて、小さい兄弟のサムネがかわいい『ピザ!』を観た(原題の直訳は「カラスの卵」)。

一言で言うと、兄弟がめっちゃかわいい!!特に私はお兄ちゃんにべたぼれ!(”上の子あるある”がたっぷり詰まっていて良い~~~)

貧困問題、格差問題、児童労働、などなど…この映画を通して語ることのできる国際的な社会問題はてんこ盛りあるんだけども、敢えてここではそれを中心に語らない。それくらい、この映画の兄弟のかわいさがこの映画の良さだから!

例によってネタバレ前提で、以下、兄弟のかわいさとか映画の良さをメモ。(書いてたらなんかあらすじ多めになっちゃった)

・冒頭の弟のおねしょ隠しシーンの後、お母さんにバレた時にお兄ちゃん「次は鍵をかけろよ」って言うのめっちゃ良い。兄弟の仲の良さが分かるのはもちろん、弟を傷つけないで笑いを取るセンスが良い。

・近所の子どもたちがみんなクリケットをする中、二人はカラスの卵を取って食べるのにハマっている。(冒頭で朝ご飯をポケットに詰めた理由がこれ!面白いなぁ。)二人とも周りにからかわれても堂々としてるし、弟が嬉しそうにしてるのも良い。お兄ちゃんの賢さを信頼してるんだなって思う。自分たちのことを「カラスの卵(大きい卵と小さい卵)」って呼んでるとこからも、誇りなんだなって思う。

・家はお父さん捕まっとるし、お母さん仕事大変そうやし、とにかくお金ないし(学校にも行けない)だけど、兄弟、楽しくかつ悪に染まらず生きてて偉い。

・カラスの卵を採っていた木が倒された跡地にピザ屋さんができて、ピザって何?おいしそう!食べたい!ってなる兄弟。そこからは欲望にまっしぐら…なところがかわいい。偶然デリバリーのお兄さんがスラムに迷い込んだ時にずる賢く本物を見せてもらうあたり、行動力を感じる。

・お兄ちゃんは行動力と粘り強さがすごい。ピザ屋に電話をかけてみて、住所が言えなくて切られてしまう。おばあちゃんに住所きいてもないも同然だと知る。諦めない。じゃあ店に買いに行かないと…となる。300ルピーを貯めるために石炭を拾う中で、シチュー大好きな優しいおじさん”ニンジン”に石炭を”失敬”できる場所を教えてもらっちゃう。300ルピー貯めていざ店に行ってみるけど追い払われる。”ニンジン”には服でスラムの人間だと判断される(そしてスラムの人間は追い払われる)ことを聞くけど諦めない。きれいな服を手に入れるぞ!となる。

・そこへ、ロケッシュ(裕福な家の子どもで時々フェンス越しに会話する)から、ピザの食べ残しをもらえるチャンスが!ここで兄弟の差が一番はっきり出たと思うけど、弟、無邪気にピザをもらおうとする。でもお兄ちゃんはもうプライドがあるから毅然として拒否。食べ残しを恵んでもらうなんて!と。かっこいいぞお兄ちゃん。かわいいけどがんばれ弟。

・服のお金を貯めるために知恵を絞ってこれまで以上に様々な仕事に精を出す兄弟。でもスマホの強奪といったヤバ目のやり方はとらないところも偉い。いざ貯まったお金を手に、名前しか知らない店へ行き(がんばって自力でバスに乗ってる!)、”服を買うための服がない”ことを悟る兄弟。でも入り口でチャンス到来。裕福だけど屋台飯を親に禁止されている同世代の子どもたちに出会って服を売ってもらう。なんて賢くて運がよくて行動力があるんだ!

・新品の服に身を包み、達成感に満ちたどや顔でスラムに戻り、いざピザ屋へ。裸足なのが気になっていたけど、案の定、ピザ屋入り口の警備員に止められ、中から出てきた店長にビンタを食らってしまうお兄ちゃん。後で広まるビデオ映像では一瞬のできごとだけど、スローで涙するお兄ちゃんの深い絶望がとっても上手く描かれたシーン。がんばってがんばって、条件を一つ一つ自力で整えて、堂々と真正面からピザを買えるはずだったのに、出自による差別という簡単に越えられない壁を思い知らされるお兄ちゃん(と、あまりのことにびっくりな弟)。

・お兄ちゃん、貯めたお金をおばあちゃんの葬儀代としてスッとお母さんに渡す。おばあちゃんが死ぬ前にイライラしていたお兄ちゃんはおばあちゃんにひどい言葉をかけてたしな…そのまま亡くなってしまったのが悔やまれたシーン。

・そこから先は偶然スラムの子が(盗んだスマホで)撮っていた映像を巡ってずるくてダメなおっさんたちが勝手に色々進めちゃうけど、兄弟のやってきたことが巡り巡って結果になっているという風にもとらえられるから、やっぱり兄弟の努力は無駄ではなかった、と思うことにする。

・最後警察にピザ屋に連れてこられてピザを目の前にして、「えっ…ずるい大人に懐柔されて終わり?そそそんなー」と思っていたら、お兄ちゃん「これ、うまいと思うか?」と弟にきく!弟とともにピザを一笑に付し、「ドーサの方がいい」って言っちゃう!最高だ。このくだりがなかったらこの映画を好きになれなかったと思うし、あと、”ピザ風ドーサ”を作ってくれた亡きおばあちゃんも報われたな~ってスッキリした。

・兄弟(特にお兄ちゃん)の素直さ、それでいて自分の心に正直で誰にも流されない芯の強さ、誇り高さ、賢さ、明るさ、行動力が清々しくて心洗われる。対照的に取り巻く大人たち(特に父親とか議員とかピザ屋の経営者たちとか、ひっくるめるとおっさんども)がむちゃくちゃダメに描かれていて、より一層際立ってた。

・ここまでくると、タイトルでもあり、兄弟の自称でもある「カラスの卵」って、そんながんばって明るく賢く楽しく生きる兄弟を表すのにぴったりなんだなって分かる。

・ダメっちゃダメだけど「ええやつ」でいてくれた”ニンジン”や、自分のことにいっぱいいっぱいだけど子どもを愛して信頼してる若くてきれいなお母さん、優しくてちょっと面白いおばあちゃんも良かったな。彼女らあっての「カラスの卵」。