『三体』Ⅲ 感想メモ

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ようやく、『三体』シリーズ完結編を読み終えた。私は活字が苦手なので、マンガや映像に比べると本は疎いけど、様々なメディアの中で、人に与えられる衝撃、刺激、トラウマが一番大きいメディアって本(文章)じゃないのかな、と近年思うようになった。マンガも映画もアニメも大好きだし、それぞれ、衝撃を受けること、トラウマになることがあるけど、文章のみでの表現のキツさって本当に独特だなぁと思う。

いきなり話が逸れてしまったけど、私にとって『三体』シリーズはそんな衝撃的・刺激的な小説の一つになったし、本当に楽しかった。せっかくなので『三体』の感想をメモしておきたい。

(例によってネタバレが前提なのでご注意ください。)

・科学知識の洪水。Ⅲは特に未来の技術に関するアイディア(西暦時代の今からすればまだ妄想に近いもの?)のスケールのでかさに圧倒される。曲率推進の光速船、光速の低速化によるブラックドメイン、マイクロブラックホール、反物質入の弾丸、次元攻撃、低次元化とダークマター、小宇宙、100億年後の宇宙などなど。気が遠くなる世界。

・もちろんただ科学知識オンパレードなだけじゃない!人のドラマがまたすごい。私が好きな主な登場人物は、優しくてダメな(のび太みたいな)主人公程心、めっちゃ不憫だけどひたすら忍耐と賢さのある雲天明、程心と対極の人間性だけど偉大と思わざるを得ないトマス・ウェイド。(智子、艾AA、フレス、関一帆は薄っぺらいので好きじゃない。。。)Ⅱの羅輯は今回かっこよすぎてずるい。

・ドラマチック(とはいえDT臭がきついけど)なのはやっぱり雲天明が程心に送った星に最後行けたところ。ガンの末期に好きだった人に脳みそだけ取り出されて宇宙に放たれた雲天明がそれでも生き残って、しかも命懸けでおとぎ話にクリティカルな情報を載せて伝えてくれるの、仏としか言い様がない。(程心を智子使っていつものぞき見してたのマジで気持ち悪かったけど)

・雲天明のおとぎ話がこれ単体でも十分面白い気がするので、作者、こんなのも書けるんだなぁ流石だなぁと思った。

・のび太もとい程心が「死よりも恐ろしい経験」で失明するところ良かった。(すぐ復活したけど。)結局ウェイドを止めたことで太陽系二次元化しちゃったけど、なんか人類のリアルってそんなとこな気がする。人類代表のび太、憎めないやつ。最後あとちょっとのところで雲天明に会えなかったの寂しかった。

・想像力の洪水。作者が描いてみせる未来の社会の姿の面白さ、新鮮さ、多様さ、そしてそれなりの説得力(←これが大事)……ひれ伏すしかない。Ⅲでは、Ⅱの先の未来がしかも何段階にも渡って展開された。私は作者のジェンダーに対する感覚は嫌いだけど、例えばⅢで主人公が最初の冬眠から目覚めた時に男性がみな「女性化」してしまっていたところは興味深かった。

・三体のⅠは中国の現代史が入ってるおかげで雰囲気激重なのが良かった。なんだかんだ私がシリーズで一番好きなのは葉文潔。Ⅱは宇宙での終末決戦が忘れられないハイライト。章北海が文句なしにかっこよすぎた。ⅢはⅠみたいなシリアスさとⅡみたいなわかりやすいエンターテイメント性は小さくなったけど、とにかくスケールのでっかい、新しくて、楽しい経験をさせてくれた。作者に感謝。