『ロープ 戦場の生命線』に見る「なるようになる」との付き合い

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またもや、たまたま見た映画がすごくよかった件。

今回は2015年公開のスペイン資本による『ロープ 戦場の生命線』(原題:A Perfect Day)。設定は「1995年のバルカン半島のどこか」となっており、ボスニア紛争の和平合意直後の痛ましく課題がいっぱいの街・地域住民とそれを支援しようとするNGOや国連が登場する(主人公たちは水などの衛生環境を整えるNGO)。と、どれだけどもシリアスにできる設定だし、史実を勉強することも可能なのだが、この映画はもっとずっと普遍的なものを描いていて、とにかく「わ、わかる~~~~~!」の連続だった。

脚本が素晴らしいのは言うまでもないんだけど、音楽もオシャレでからっとしてるし、なによりキャスティングが最高で、ホントみなさんいい仕事してる…!主演のベニチオ・デル・トロはもちろん、どの登場人物もかなりキャラが立っていてかつ嫌な奴がいない感じが好き。

今回は「わ、わかる~~~~~!」ポイントをメモしておこうと思う。

①正義に燃える若者が苦い経験を経て”大人”になっていくパターン

これはホントに自分に重なって恥ずかしく見ていたのだけど、どんな職場にも、理想的な正義の実現を目指して熱血で向かっていく若者っていると思う。で、だいたい組織だったり環境だったり運だったりに見方されなくて、悔しい思いや悲しい現状を我慢しなければならないことがあって。(そこで挫け切って辞めてしまうかどうかは、それもまた仲間や環境との運・めぐりあわせで、もうちょっと頑張ろうと思えるかどうか決まると思うけど。)この映画ではNGOの若手のソフィーがそのキャラで、国連にしつこく異議申し立てしたり、死体を見てびっくりしたり、二コラの運命を案じたり。そしてベテランたちにからかわれたり、なだめられたり、まぁあたたく育ててもらってる。もし自分がベテランの側だったら間違いなくすんげーめんどくさい奴として距離を置きたくなるので、マンブルゥ(ベニチオデルトロ)たちは優しいなぁと思って見てたw(そしてきっと私は周りからすんげーめんどくさい奴と思われていたんだろうなぁww)

(審査官のカティアも自分の仕事を自分の論理でゴリゴリやろうとするところは似ているけど、それはまたちょっと別の枠なので割愛)

 

②自分が最善と思うことをできる範囲でがんばってやったのに最終すごいがっかりさせられるパターン

相手が子どもとか異文化の人とか、自分と異質であればあるほど、リアクションにびっくり・がっかりさせられることってあると思う。がっつりと見返りを求めてるわけではないんだけど、何かその人のためにがんばった後で、感謝とか、何かしら自分の使ったエネルギーが返ってくるようなリアクションをしてほしいことって普通だと思う。それに対して、相手が(自分の思いからすれば)ドライな行動をする。あるいは、はっきりとした相手がいるわけではないんだけど、解決しようとしていた問題に横やりが入って、自分ではそれ以上何もできなくなる。

映画の中だと、二コラのボールを命がけで取ってきたけどそれを10ドルで他人に売られるところとか、ようやく手に入れたロープで井戸の死体を引き上げてる途中で国連にロープ切られちゃうとことか。あと、通行止めで地元の武装組織に銃を向けられてる捕虜を見かけたけどその場では何もできずに引き返すところとか。

今までやってきたことが不意に終わる。そういうことって時々あって、私の場合はもうめっちゃくちゃがっかりするし、だいたいすべてのやる気をなくして腐ってしまうw

③なるようになる!天に身を任せたら意外とあっさり解決しちゃうパターン

これは②の続きでもあるのだけど、とっても困った状況で、あがいて、結構しんどくて、諦めたり手放したりした後で、全然自分の力が及ばないところで解決しちゃってることってある。映画だと、牛の地雷トラップの手前で野宿してたら地元の牛飼いおばさんがたまたま朝通ってくれて、後ろついってったら脱出に成功するとことか、井戸の死体が最後は雨で押し上げられて取り出せるとこ、捕虜が国連に救出されるとこ。(悲しく辛い場面ではあるけど)探し求めていたロープを最後は吊るされた二コラの家族から取ったとこ。

私自身は(腐ってしまった後で)物事を見届けたことがあまりないけど、きっと多くのことってそうなんだろうなと思う。なるにまかせるマインド、もっと持てたら健康だろうなぁ。

④がっかりしても自分なりのあがきで納得していくパターン

これも②の続きで、③につながることもあるやつ。映画だと、二コラがボールを売った後、理由を聞いて、追加のお金を渡しつつ、おじいちゃん連れてけよって約束するとこ。②もそうなんだけど、諦める前にはみんな精いっぱいあがいている。自分にできること、できる範囲でやり切ってから手を放す。後悔や心配は残るかもしれないけど、やっぱりあがくって大事だしそこに美があるなぁって思う。若者もベテランもそこは一緒。最終結果を知ることができればベターかもしれないけれど、ハッピーな解決とは限らないので微妙だ。

 

以上、わかる~~~~~!ポイントだけのメモ。

全然共感しないけど楽しかったのは、マンブルゥが美人な元カノ(?)のカティアと今カノ(電話でのみ登場)の板挟みで”戦争”を闘っているところ。情けなーい感じがかわいかったw